にゃんこ男子は鉄壁を崩す



 ガイーーンッ! 

 変な音が私の部屋に響き、私は体勢を崩して派手にこける。力任せに引っ張ったのが悪かった。

 今日はエコバッグを忘れてスーパーのビニール袋だったのも災難だった。袋は無残に破れ、中の野菜やお肉、そしてアボガドさんたちがバラバラと散らばる。悲惨なのは変形して中身の水が漏れ出た焼き豆腐。中の豆腐は潰れて玄関の床を汚した。水が出たけど中身は潰れたけどなんとか焼き豆腐、食べれそうだ。

 玄関に入った瞬間に靴を脱ぎだしたのも悪かった。靴は部屋を飛び出して玄関の外の廊下に転がっている。そして膝がジンジンと涙が出るくらい痛い。

 そして私を突如襲うなんという虚無感。泣けるわ、なんか。転んだって泣いたって誰かが助けてくれるわけじゃない。誰かが、慰めてくれるわけじゃない。


 だから、私は黙々と泣きながらアボガドさんたちを拾い集めた。ひとつため息をつくとひとつ涙が溢れる。鼻をすすりながら、靴を拾った。ジーンズを脱いで傷を確認するとしっかりと血が滲んでいる。


 こりゃ、お風呂、痛そうだな……。脱いだジーンズの側にはほっかぶり。漸く、にゃんこのミィコ小宮に返してないことに気づく。そして手当を終えてジーンズを履き直した私は水が出てしまった焼き豆腐を無駄にしないために痛みを堪えながら鍋を作った。


 私はぐつぐつと煮えるお鍋を見ながら涙を堪えた。