思わず、野菜を切っていた包丁を両手でしっかりと持ち、ベランダに近づいた。そしてレースのカーテンを引くとベランダにいた人物は私の手に握られている包丁を見てギョッとする。
……私だってギョッとしたわよ! なんでここにいるの、お隣さん!
お隣さんだからといって私は警戒を怠らない。包丁を握ったまま、ベランダに続く窓の鍵を声が届くように少しだけ開けた。それでも、緊張が解けなくて声が震える。
「小宮さん、何をしてるんですか」
小宮、というのはお隣さんの名前だ。今日、帰ってきてなんという名前なのか表札を見て確認したのだ。
「ああー……アハハ」
窓の向こうで微妙に笑う小宮さんの顔を見た後、彼の手に持っている物に目が止まった。
!!!
彼が手に持っていたのは!
なんと!



