「……由比子ちゃん、ヨダレ」
「えッ!」
慌てて口を拭くとあずちゃんが「嘘よ、嘘。でも、ヨダレ垂らしそうな顔してた」と言ったので「じゃ、いただきまーす」と言ってサラダからいただこうとしたら、ビシっと手の甲を叩かれた。
「トレードと言ったでしょう。おにぎり1個ちょーだい。そうね、おかずは唐揚げ食べなさい。由比子ちゃんガリガリなんだから」
「ええッ! サラダは!」
「はい、どうぞ」と渡されたのはタッパの蓋に乗せられたこじんまりとしたシーザーサラダ。しっかりとデスクの机の中から割り箸を出してきてつまもうとしたサラダはこんなにも、ちいちゃく、ちいちゃくなってしまいました。
割り箸をつまんだままサラダを見つめていると、すかさずあずちゃんに「由比子ちゃん、文句があるなら食べなくてもいいのよ」と、言われてしまった。
「食べるよ、遠慮なく。あずちゃんもこの鮭のおにぎり、さあ、どうぞ?」
「ふふ、ありがとう、由比子ちゃん」
大きなお口を開けておにぎりを頬張ったあずちゃんは感嘆の声を漏らす。
「んー、由比子ちゃんのおにぎり、すごく美味しいね! もちもちしてる!」
「そうでしょう、そうでしょう。なんてたって実家から送ってきたブランド米の新米だからねッ! でも、あずちゃんのシーザーサラダも美味しいよ」
「もう一つおにぎり」
「シーザーサラダとトレード」
「むぅ、仕方ないわね」
やった! 野菜獲得! 感謝、お母さんのおかげだよ!



