にゃんこ男子は鉄壁を崩す



 でも、彼女はそれらを全て置き、今度は一つの手帳をまじまじと見ていた。その手帳はさっきビーグルが説明してくれたクリエーターの作品で一点一点手作りだ。

 棚に飾られている赤い手帳にはやはりワンポイントがついていて花びらではなく、可愛い猿の顔があしらわれている。中も相当凝っていて、中を仕切る厚紙は色鮮やかな和紙が使われており、diaryとmemoなどの項目が綺麗なピンク色の糸で縫われている。


 その凝った造りに感心し、その手帳を仕入れることに決めたのだ。ただ、少し値が張る商品で。なかなか、買い手がつかないのが悩みの種で、万が一売れ残ったら私が買おうかなどと考えていた。だって、売れ残ったら委託商品だから返品しなきゃいけない。


 スケジュール管理を手帳に書き込むなんて面倒くさがりの私はしないけど。近くに置いておきたい、というのが私の密かな願いで。もし、買うことになればスケジュール管理も日記も書くようになるかも。


 だから、売れて欲しいような、売れて欲しくないような。