狭いエレベーターだから距離が近いのは当然なわけで。彼の細っこい後ろ姿を見ながら、少し緊張する。密室に二人と言ってもたかだか1分ほどだ。すぐ着くから……と思ったところですぐ後ろにいる私の前で彼が振り返った。
「なんかスーパーでも会ってマンションも同じなんてすごい偶然ですね?」
彼はニコリと笑顔で話しかけてきたけど。いきなり話しかけられてかなり戸惑う。鉄壁女の私はこういう場合、可愛いことなどひとつも言えない。
「この辺にスーパー一件しかないから普通じゃないですか」
「可愛くない女……ボソッ」
前を向いてボソっと言ったけどはっきり聞こえてんのよ、バカッ! 『お姉さん』から『可愛くない女』に格下げされてショックを隠しきれない。鉄壁女だって何気にそういう言葉傷つくんだから!
鉄壁作ってるのだって訳ぐらいあんだから……



