「王子、お呼びですか」 後ろからの声に、私の口を塞いだまま彼は、 「すぐ出れるよう竜の準備をしてくれ」 そう言って、来た男を下がらせた。 王子って……銀髪のこの人が…? もう一度、目の前の男の顔を見る。 “王子様”。 その言葉がピッタリなその容姿に、何の疑問も生まれなかった。 「湖で何を見た? 化け物とは何だ。 湖に生物はいないはずだ」 塞いでいた手を外し、厳しい顔で見下ろす彼を見ていると…… 何かを、思い出しそうになる。 .