* 竜の眠る国 *







 ――そうよ、泣いてる場合じゃないわ。




 涙を拭い、立ち上がった。


 すると、変な感覚に襲われて。

 足元を見ると、一面苔に覆われていた。



 その場で足踏みをしてみる。


 ―――うん。

 地面はフカフカで柔らかい。
 これなら、素足で大丈夫だわ。



 とりあえず喉が渇いたし、水を……


 少し落ち着いたのか、また、ゆっくりと辺りを見た。

 すると、先ほどとは違い、木々の隙間から光が差し込み、葉や苔が黄緑色に光り美しい光景が広がっていた。



 私の恐怖が、さっきのようにこの森を薄暗く見せていたのかな……。


 こんなにも美しい場所だったのに……



 私はゆっくりと、自然を楽しむかのように歩き進めた。