* 竜の眠る国 *





「あ――っ もう無理!

 一歩も動けない!っていうか動きたくないっ」



 叫んで、ヒールを脱ぎ捨てた。

 が、ガサッという音に慌てて後ろを向く。

 けど、何も見えなくて。


 ……追っては、ない。
 でも、ここにずっとはいられないよね。



「……カイン…」



 誰かにずっと呼ばれてる気がする。それは、きっと彼だ。


 双子の私たちは、お互いに敏感過ぎるくらい繋がり合っている。

 きっと私が居ないことに気づいて捜してるんだわ。……じゃないと、許さないわよ。




「で……ここはどこなの…?」



 汗が流れ落ち、喉も渇いた。

 なのに、見渡す限り木々しかなくて。



 ――なんでこんな目に遭わなきゃいけないの…?



 涙が、今にも零れ落ちそう。

 泣いてる場合じゃないのに……