* 竜の眠る国 *





 何っ!あんなの知らない…!



「はぁっ…はっ……はぁっ…」


 柔らかい芝生で良かった…!

 低いとはいえ、ヒールで逃げるなんて、転んで大惨事よ!





 逃げた先には、深い森。


 あんなに大きな蝶々が森の中まで飛べるとは思えない。――が。

 森を前に、足が止まった。




 森の入り口から見えるけど、中は木々が遮るせいか、光が入らず暗い。


 この中に入ってしまったら……二度と出て来れないんじゃ……。



 振り向くと、蝶々はすでに私の近くにいて、やはり人が乗っていた。

 その姿が大きくなり、鳴き声も耳に痛いくらいに響く。


 捕まるのは、時間の問題だ。



 迷子か、知らない人に捕まるか……どっちがマシかな…。



 頭に浮かんだ答えに、慌てて森の中に入った。