* 竜の眠る国 *






「………!」


 駄目…!そんな酷いこと…!



 止めたいのに……

 必死に出した声は、かき消された。




「王子…!」

「シオン様! ご無事ですかっ」


 石の床を武装した兵士達が走り寄る。……その姿は、神殿の兵士とは違った。




『……安心して。もう大丈夫だよ』


 エルクが安堵の声をあげ、私の頬を鼻で撫でた。

 私は痛みのせいで気が遠くなるのを何とか堪え、彼の鼻筋に手を伸ばす。



「……エル……なた、は……」


 大丈夫…?



 私がなけなしの力で伸ばした手を見て、彼の瞳は瞬時に涙を溜めた。



『動かない方がいい……
 傷が…!』



 震えるエルクの声。


 伸ばした自分の手が赤く染まっていることに、やっと気付いた。