* 竜の眠る国 *





「エルク…!」



 震える足に鞭打ち彼に駆け寄る。

 彼は鼻息荒く、鋭い瞳で彼女―――巫女姫を見ていた。




「エルク…っ 私は大丈夫だから…!」


 エルクの瞳をのぞき込み首に抱きつくと、彼は興奮しながらも大きく息を吐いた。



『ユウナ、怪我はないか?』


「ありがとう…。
 私は大丈夫よ。だから…」


 ゆっくり顔を上げると、さっきまでの険しい表情から一変、彼は安心したように笑う。

 でも私が彼の鼻筋を撫でると、目を見開き騒ぎ始めた。



『―――血が! 怪我してる!』


 私の手首には縛られた痕があり、そこが出血していた。
 それを見て慌てるエルク。

 しまった!と気付くのが遅く、私は安心させる為に笑った。



「これは見た目ほど痛みはなくて、ただの擦り傷だから」


 私の説明に、彼は眉を下げながらもペロッと、傷口を恐る恐る舐めた。