* 竜の眠る国 *








「やはり、そなたでしたか」





 口角だけを上げ笑った顔は、目が笑っていない。




「巫女姫、その者は――」


「よい。そなたには聞いてません」


 斜め下を漆黒の鋭い瞳が睨みつける。


 私もそれを追うと、彼――鼻の付け根に切り傷のある兵士が、額と腕に血を付け身体を縄で縛られていた。


 あまりの姿に言葉を無くしていると、彼よりも階級の低そうな兵士が乱暴にその縄を引っ張った。



「…っ」


「―――やめて!」



 痛みに顔を歪める兵士。

 あまりの扱いに駆け寄ろうとするが、


「そなたはこちらへ」


 巫女姫の白く細い手が私の腕を力一杯掴み、それを阻止した。