* 竜の眠る国 *





「あんなの、挨拶みたいなもので…っ」



 平静を装いながらベッドを抜け出しソファーに腰掛ける私を見て、マーサがさらに笑った。




「シオン様があんな甘い行動なさるなんてこと無いわよ?

 どなたに対しても、あの方は表情も態度も変えたりしません。
 良い意味でも、悪い意味でもね。


 でも……ユウナには、違うようね」



 言われて、私は少し前を思い出した。




『君はバカか!二度も湖に入るなんて!』



 そんな人に怒鳴られた私って……どうなの?




「きっと、ユウナはシオン様にとって、特別なのね」


「そんなこと…」




「絶対そうよ!」



 一際大きな声に体がビクリと揺れた。すると、さっきまで放心状態だったナタルが、鼻息荒く近付いてきた。