* 竜の眠る国 *





「そなたか。

 何人も入ってはならぬと伝えたはずだが?


 そなたも例外ではないぞ」



 王様の響く声に、私の隣の兵はびくりと体を震わせた。


 その威厳ある声に、巫女姫も体を震わせる。




「なれど、その話は私の話ですよね?

 私がいない間に勝手に決められては困ります」


 その重い空気を感じさせないいつもの表情でカツン、と彼がゆっくり足を進める音が響いた。




 ここにいるのは、王様と側近の騎士、それと、私を拘束する兵と巫女姫だけ。


 シン…と静まりかえる広間に響く足音に、緊張が走る。




「父上は古き唄を信じておられるのですか?」


「――無論だ。

 我が国に伝わる古の唄を、そなたも幼き頃より聞いているだろう?

 現に、湖に聖竜が現れた」



 聖竜……ガルーダの事だわ。