* 竜の眠る国 *






「私の顔に何かついてるか?」



 あまりに私が見つめたせいで、王様は小さく笑い、私に尋ねた。

 それを聞き、慌てて兵が私の頭を下へ押さえつける。




「そなたの名は?」



 聞かれて、一瞬口をつぐんだ。けど、シン…と静まり返るこの空気に、小さく「……ユウナ」と答えた。


 名を聞いた王様は、私の腕を掴んでいる兵に「ユウナの拘束を解いてやれ」と伝えた。





「……さて。そなたに聞きたいことがある」




 両手を縛る縄が解かれた後、柔らかさの中に強さが見える声で尋ねた。




「ユウナはどこの国の者だ?」



 私を見るその目の奥の鋭さに、背筋がスッと寒くなる。




 ―――王者の目から逃れることは、きっと出来ない。