部屋に戻らず庭を歩くシオンの後ろから、駆け寄る足音がした。 が、彼は気にするでもなく、足を止めない。 しばらく歩いていると、硝子張りの建物が見えてきた。 彼はゆっくり私を下ろすと、手を差し出す。 「“クリスタル・ガーデン”だ。 いま準備をさせる。 先に中に入って待ってよう」 ……クリスタル・ガーデン。 名前の通り、陽に輝く美しい建物だわ。 「勝手に入っていいの…?」 「かまわない」 先を歩く彼の後ろから、息切れしたマーサとナタルが追い付いた。 .