* 竜の眠る国 *





「今から湯の準備をしてきます。

 食事を先に済ませてしまいなさいな」



 柔らかい口調でそう告げると、また、カーテンの向こうへ行ってしまった。



 私は身動きできず、ベッドにいるしかなくて。

 そうしていると、カーテンがフワリ風に流れたと同時に、人影ができた。


 途端に強ばる体。




「シオン様の命で食事の用意をさせた。

 湯浴みの前に食べなさい」



 ユリアンの姿に、少し体の力が抜けた。



「あの…」

「何か?」



 王子は、何時の間にか部屋から出ていたらしい。

 見る限り、シルエットはユリアン一人分しかなかった。