「娘が目を覚ましたなら問題ありません。
引き渡すべきです」
「断る」
「――王子!」
この世界の住人でない私は、捕らえられたら何をされるか分からない。
そんな恐怖の中、シオンは言った。
『断る』と………
「マーサ、彼女に食事の用意をしてやってくれ」
王子の呼びかけに女性が返事をすると、こちらに近づくシルエットが見えた。
「気分はいかが?」
とカーテンを開け、マーサと呼ばれた先ほどの女性が微笑んだ。
「私の事はマーサと呼んでちょうだい。
体力が落ちてるから無茶はしないようにね」
優しく微笑んで、カーテンから姿を消した。その、次の瞬間―――
「さぁ、これより殿方はご遠慮下さいませ。
彼女を湯浴みさせますので」
強い口調で言うと、またカーテンを開け中に入る。
その姿に、私は後ろにずり下がった。
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