* 竜の眠る国 *










 ………キス、されるかと思った。



 少し離れた場所から聞こえる彼の声に、勝手に反応してしまう。




「即刻娘を差し出せと仰せです」

「伝説の唄を父上は信じておられるからな」


「……あの姿を見ては、致し方ありませんよ」



 王子とユリアンの会話を聞きながら、段々体が強ばってきた。


 話の内容に、森の中で王子に言われたことを思い出す。



 湖に入った私は“大罪人”で、捕らえると言っていた。


 私はきっと、差し出されるんだろう。