………キス、されるかと思った。 少し離れた場所から聞こえる彼の声に、勝手に反応してしまう。 「即刻娘を差し出せと仰せです」 「伝説の唄を父上は信じておられるからな」 「……あの姿を見ては、致し方ありませんよ」 王子とユリアンの会話を聞きながら、段々体が強ばってきた。 話の内容に、森の中で王子に言われたことを思い出す。 湖に入った私は“大罪人”で、捕らえると言っていた。 私はきっと、差し出されるんだろう。 .