私の子供時代は、幸せだったのだ。なんの不自由もなく、満ち足りていて。
いつからだろう。心から笑えなくなったのは。疲れてしまったのは。
訳もなく心が痛む。
私は、誰かに認めて欲しかった。自分を肯定して欲しかった。その一心で頑張って、数字上の良い評価なら、たくさんもらった。でも、それは私を独りにしていった。“いい子”で扱いやすい“優等生”周りには一目置かれるけれど、その分壁ができてしまう。大人からの期待は重くのしかかる。気付いたら誰にも言えなくなっていた。抜け出せないまま、いつの間にか大人になっていて。一人暮らしを選んだのはそのためだ。
一人で気ままに生きることを望んだ。でも、それなりに幸せに暮らしているけれど、まだどこかでなにかに縛られている。
 いつの間にか雨が止んでいる。東の空は、ほんのりと明るくなってきていた。小鳥がさえずり始める。もうすぐ、朝がやって来る。