私は、決して美人ではない。黒い髪は硬質で量が多く、いつもまとめていなければ不潔そうに見えてしまうし、目はくすんだ緑色で、あまり綺麗とは言えない。頬のそばかすも、小さい頃から好きにはなれなかった。欠点は多いけれど、父親譲りの小さくすっとした鼻だけは、密かに気に入っていて、自慢だった。
 母は美しいひとだった。髪はふさふさとした金髪だったし、ぱっちりした大きな瞳は、私のより透き通った緑色で、まるでエメラルドの泉を覗き込んでいるようだった。すらりと華奢で、真っ白な手に青白く透ける血管は、家事をこなしても荒れることを知らなかった。
一方父は、私をそのまま男にしたようなひとだった。目だけは、青だったけれど。優しい面立ちで、体格も男性にしては細身だった。
 そんな可憐な母も、柔和な父も、もう10年も前に流行り病で他界してしまった。