理由が心底知りたかったわけじゃない。だけど、後部座席で温かい赤ん坊を腕に抱いたまま、息子を寝かせるためにユラユラ揺れていたら、こっちまで眠くなってきてしまったのだ。まさか寝るわけにはいかないでしょうしね。何か話さねば、そう思ったんだった。

 温かい車の中、眠くなるのは仕方がない。だけど、私は今コンビニ強盗と息子と一緒にいるんだった。

 ヤツはもう一度私を見た後、ぼそっと言った。

「・・・お前に関係ないだろう」

「―――――――」

 ―――――――――あら、会話が終了してしまったわ。仕方なく、私は肩を竦める。もう、眠気防止にもなりやしないなんて、このバカ男は本当に使えない。

「隣町の駅はとっくに過ぎたけど、一体どこまでいくつもり?このまま日本横断でもするの?」

 たら~っと聞けば、それもいいかもな、というふざけた返事が飛んできた。いやいや、やめてよ迷惑な。

 車を乗っ取られてから、そろそろ30分が経っていた。都心に入っていて、人も交通量もかなり増えている道を制限速度で走っている。検問が見えればすぐに回避するつもりだと判った。だけど高速にも乗らないでは、そんなに遠くには短時間ではいけないだろうに。

 ちらりと見ると、雅洋は眠ってしまっていた。よし、とりあえずこの子をシートに寝かせて・・・。そろりとベビーシートに息子を固定する。寝てくれるのを待っていた。ちょっとこれからお母さん頑張るからさ、君はここで大人しくしててね、そう思いながら。