“家雫周気(ヤダ•シュウキ)”。

彼はこの春高校生になる15歳の少年。

そして“君”、君はこの春彼と同じく高校生になった15歳の少女。


月は4月、入学式。

彼と君は出逢ってしまった。

この場所で。


“妃津野宮中学校(ヒツノミヤチュウガッコウ)”。

ここが彼と君が通う高校。

そして、その高校にある屋上で朝、君と彼は出逢った。


周気「あれ?人は居ないと思ったのだが」


午前7時頃、君が屋上でたそがれていると、彼はやってきた。

彼はそのまま君の真横に寄り添い、同じように風を感じる。


周気「いい空気だね」



君は彼の言葉に頷いた。

そして、彼の顔をジッと見つめる。

彼は眼鏡をしているが、綺麗な顔立ちということは直ぐに分かる。

誰が見ても素敵な人だと思うだろう。


周気「ん?どうしたの。
僕の顔なんかジッと見て…。
あ、もしかして何かねだってる?なんなら買って来るよ?」


彼は笑顔で爽やかに君に問いかける。

君はあまりの恥ずかしさに首をふるふると振り、屋上を出ようと扉の方を向く。


周気「待って!」

君「!?」


彼は慌てた声を発し、君の腕を掴んだ。
君はそれに思わずビクリと肩を動かす。


周気「あっ…あぁ、ごめんね。
その、一人じゃ何かその…寂しいなって」


彼は顔を少し赤くして言った。

必死な彼を見るなり君は彼の手をそっとふりほどく。


周気「え…」


彼は一瞬物悲しそうな声を発し、君を見る。

君はそんな彼から目を逸らし言った。

「そういうことは初対面の人にすることじゃないです」と。

君はそのまま屋上を出て行った。