――1年前――
「…そう言えば今日は私の誕生日なんだっけ」
確かママはパソコンを買ってくれて、パパはベッドを買い替えてくれるんだっけ?
毎年豪華な誕生日だよなぁ、本当。
「生活は充実しているかしら?」
突然後ろから聞こえた声で振り返ると、9年前私を助けた天使が屋根の上に座っていた。
「ア、アンタ…」
「久し振りね、元気だった?…って、言うまでもないわね」
「何でここにいんのよ…?」
「あらま、随分と口が悪くなったのね。…何でって、契約を果たしてもらうためよ」
「契約…!? 」
契約という単語を出され、すぐに解ってしまった。
9年前、私が「体を治して欲しい」と頼んだのはプレゼントではなく、「契約」だったということを。
「そ、契約。キッチリ果たしてもらうわよ」
「ア、アンタ、そんなこと一言も…」
「誰もタダで治してやるっつってなかったでしょ。そっちが勝手に解釈したんじゃないの」
天使が言ったのは余りにも非道なことだった。つまり、騙される方が悪いと言ったようなものだ。
「っ、アンタ…さいってい…!!」
「ふふっ、大丈夫よ、すぐに済むから」
天使の手は紅く光りだし、その光を見た私は深い眠りについてしまっていた。