ーーこれは、いけるか!?



「日菜子…」

俺はブルブル震える手を日菜子の腰に回そうとした。
しかし、日菜子は「あ!もしかして!」とまた大声をあげてバスルームに向かった。


ここは賃貸マンション。
そんなデカイ声をあげたら近所迷惑だ…と思っていたら、バスルーム…いや、そんな高級な言い方は似合わない。
なんたって家賃60000円の1Kなんだから。


風呂場から日菜子の「いやぁぁ!」という叫び声が聞こえた。




はいはい。と、重たい腰をあげたと同時に風呂場から日菜子が血相を変えて出てきた。
その体には力が入っていない。



「薔薇が…薔薇がぁぁ…」

「浮いてただろ?」

「“一本”ねっっ!あたし無数の薔薇って言ったんですけど!?」

「無理言うな!風呂に浮かべる薔薇に高い金出せねーよ!」



ギャーギャーと言い合いを続けていると、隣の部屋からドン!と、音がした。
お互い顔を見合わせて「シー」と、人差し指を口にもっていく。


ーーそして、どちらかともなく笑った。