「ーーそれでね。あたしがこう言ったら、サトルは「それでもお前が好きだよ」って抱き寄せるの。
いやーん。ロマンチック…」


俺の彼女は自他共に認めるロマンチスト。

それだけならまだ良いけど
困ったことに、妄想スイッチが入ると止まらない。


そして、何より面倒なのは
妄想したことをそのまま忠実に再現したがるところ、だ。
だから、俺はいつも釘をさす。


「そんなこと、現実にはしないよ?」

「もう、サトルってば現実主義!」


イーって口を横に広げて、顔をしかめる俺の彼女、日菜子とは、付き合って3ヶ月が経った。




初めて手を繋ぐ時はね、サトルが足の遅いあたしを強引に引っ張るの。
それで、「たくっ。お前は仕方ねぇーな」って良いながら耳まで真っ赤でーー


そう言われたから、実行したのに、
日菜子は「耳、赤くないじゃん」といきなり現実に戻る。
もうその変わりようには拍手を送ってやりたかった。