「仕方ない…アリスの提案ですしね。…では行きましょうか。」
白兎は、たっぷりと悩んだ後言った。
「そうと決まったら早速向かおう、白兎さん。帽子屋さんはどこに居るの?」
「んー…えっと…」
どこだったかな…と再び考え出す兎。
アリスは大きな溜め息をついた。

…まぁ、そんなこんなで。
兎が帽子屋の住家を思い出す事はないとアリスは思い、とりあえず歩く事を提案した。
兎は、もう少しで思い出せそうなんですがね…すみませんと言ってアリスにしたがった。

それにしても…とアリスは思う。
――いくら血が薄れてきてるといったって、突然すぎないかな…
こういうのって、少しづつ変になるんじゃないの…?――
白兎が黙って歩くので、アリスの思考は違う方へと巡る。
――いや…今までお母さん達が話してくれなかっただけなのかも…そうね、きっとそうだ。
…でも、どうして?…
これを知ったら、私が行かなくなるって思ったのかな?
…それとも――
「う」
「あ、すみませんアリス。」
突然立ち止まった白兎の背に鼻の頭を軽くぶつけた。
「いきなり止まらないでよ…アリスは急に止まれません。」
「アリス、見てください」
私のギャグ(?)を…
アリスは小さく言いながら、兎の背に隠されていた前方の風景を見る。

「蝶だ」
「蝶ですね」

…そう、蝶々だった。
このファンシーなお花畑に、すごくリアルな蝶々が飛んでいた。
…こんなリアルな蝶々、登場したかな…
「あ、あのー…」
アリスは蝶に話しかける。
が、返事はない。
蝶に話しかける方がおかしいかのように、蝶は黙ってひらひら飛んでいる。
「…河は喋って蝶は喋らないの?」
「ううむ…あ、アリス、花には通じるみたいですよ。」
…つくづくおかしな国だなあ…アリスはつぶやいて、花に近付いた。