時間の止まった森を兎を先頭にして彷徨う。
「…疲れました…」
「あ?てめぇ…皆殺されてえのか?」
「それは嫌です…」
「じゃあつべこべいうな。」
猫が白兎を後ろから小突いた。
確かに…私もちょっと疲れてきたかも…
「もう近いですね…良く聞こえるようになりました。」
「本当か?」
「…ええ。
そこの木を右に曲がったら誰か居ると思います」
「よし!」
若干動きが鈍くなった兎を抜かし、猫がずかずかとそこへ向かう。
「誰だ!」
「ひっ!」
誰か見つけたのかな…私と白兎も猫のもとに向かう。
「トランプ兵か…
なんでこんなとこに居るんだ?女王はどこだ!」
ぐいっと、猫が腰を抜かしているトランプ兵の胸倉を掴む。
カシャン、とサングラスが地面に落ちる。
濁った瞳が露になった。
「…あ、あ、あの、じょ、女王様はこの奥に居る事を私は誰にも言ってはいけないのです…!
言えば私はトランプに逆戻り…ううう」
…なんか、可哀想だな…泣いてるし。
「…そうか」
猫がトランプ兵の胸倉から手を放す。
「…馬鹿が」
ビュッ!
「っ!!!」
猫の頬に赤い線が引かれる。
「間抜けですね…チェシャ猫。あなたともあろう人が油断など。」
「っ…この…」
キンッ、ガキンッ!
と、長く鋭くなった猫の爪と、トランプ兵のナイフが交わる。
それを見ていた白兎が、突然振りかぶって
…ビュッ
「!」
「!」
ピタッと二人の動きが止まる。
「…うるさいです…
喧嘩なら外でしてください。」
…外だよ?
とはつっこめなかったけど…――だって怖いんだもん――
とりあえず…喧嘩?がおさまってよかった…
「さ、行きましょうか。」
ナイフで木に張り付けられたトランプに見向きもせずに、白兎は奥に進んでいった。