おかしな国のアリス

「こっち」
ぐい
「次こっち」
ぐいぐい
「そいで…」
ぐ
「待った!!」
「は?」
「さっきから、ぐいぐいぐいぐい…!
口で言えばいいでしょ!」
猫はきょとんとして、手を離した。
「じゃあ、勝手にどっか行ったり、後ろのそいつに捕まったりするなよ?」
「しません」
そのまままた、猫はとことこ歩く。
「そろそろだな」
くんくん、鼻を鳴らして猫。
後ろのトランプ兵とは全然違うなぁ、と思いながら、私は猫の後ろをただついて行く。
そして、何度目かの角をまがると
『アリス!』
大勢に呼ばれた。
声のトーンこそ違えど、みんな同じような声だった。
「……」
「……」
「……」
猫もトランプ兵も、もちろん私も絶句した。
ひとつのおおきな牢屋に、白兎がたくさんいたんだから、当たり前だ。
私はこんなにたくさんの白兎を見たことない。
…いや、他の誰も見たことないだろう。
「ど…どういうことよ…これ」
「こりゃ困ったな…匂いはみんな違うが…強すぎて本物の白兎匂いがかき消されてる。」
「じゃあ…」
「あんまり俺の鼻は頼りにできねぇってこった。」
そんな…
そしたらどうすればいいの?
トランプ兵はもちろんあてにならないし…
私だって、白兎を見抜く方法は知らない。
二人だけの合言葉があるわけもない。
「どうするのよ…」
「アリス」
久しぶりに、トランプ兵が声を出した。
「私をニセモノだと見分けられたのですから、きっと大丈夫です。」
にこり、笑った。
「…」
頑張るしか、ないか…。
私は白兎の集団を見ながら、溜め息をもらした。