「くんくん」
「…」
「くんくん」
「…」
…まぁ、やっぱりと言えばやっぱりだけど…
道に迷った。

…。
「匂いでわかるんじゃなかったの?」
「いやぁ…匂い全然しないんですよね」
「じゃあどうするのよ!」
トランプ兵はうーん、と考え込んでから言った。
「ならば耳で」
「あなたの五感は信用できないわよ!」
言うと、トランプ兵はしゅんとしてしまった。
ああ…扱いにくい。
「とりあえず歩きましょう?ここで立ち止まっててもしょうがないよ。」
「…そうですね!」
…はぁ。
とは言ったものの…
やっぱり全然見当も付かない。
「あ!」
「えっ?なにか見つけたの?」
「あのですね、迷路は昔から、壁に手をついて進むと抜けられるのって聞いた事があります。」
「ふーん…
…いや、抜けちゃだめでしょ?」
「あ…そうでした」
あはは、と頭をかくトランプ兵の目の前に、閃光が。
「はい?」
続いて罵声。
「てめぇら、いつまでやってんだ!おせぇよ!」
暗闇の奥から近付いてくる影は…――
「猫…!?」
「おうアリス。
まんまと道に迷いやがって。」
ばーか、と悪態をつくそれは、紛れもなく、猫で。
「ねこぉ…」
なんだか泣けてきて。
「あー…泣くなよ!俺がなにしたっつーんだ…」
「きっと安心したんでしょう…」
「ったく…
つーか、なんだよお前」
「私は女王に恨みのある、元トランプ兵です」
「信用ならねぇな」
「無理もないでしょうね…まぁ、事実ですから」
「…俺らになんかしたら、ぶっ殺すからな」
「おや、それは怖いですね…」
泣いてる私を放置して、二人が縁起の悪い会話をしてる。
「ま…とりあえず行くぞ。こっから結構近いし」
「ほ、本当?」
猫はうなずいて、私の頭を乱暴に撫で
「うし、ほら、こっちだ」
ぐいぐいと腕をひかれて進んでいった。
トランプ兵も、その後に続いた。