とりあえず、私は部屋中のトランプをみてまわった。
…うーん、赤一色。
そろそろ疲れてきたな…
「アリス!」
「え?」
「そこ、天井から1メートルくらい下」
「?」
猫に言われるままそこを見ると。
「…黒い…?」
黒いトランプ。
…ハートじゃなくてスペードのクイーン?
黒いカードがハートのトランプの間から少しだけ頭を出している。
猫は鼻だけじゃなくて耳もいいみたい。
「…これを、どうすればいいのかな…」
そのトランプを手に取る。
「さぁ。食べてみれば?」
「食べ…嫌よ…」
なにが悲しくてトランプ食べなきゃいけないの!
「じゃ、どーすんだよ?」
「…うーん…」
「やっぱり食べるしかないだろ。」
「それは絶対嫌!」

そんなわけで、私たちはしばらくそのトランプとにらめっこをしていた。
「…」
「…」
…やっぱりトランプは関係ないんじゃないかな…
「ねぇ…」
「わかった!」
いきなり猫が顔をあげた。
「こする!」
「はい?」
いや…え?
トランプを?
「いいからこすってみ!」
「…う…うん…」
そんな猫の勢いに圧倒され、私はトランプをこすってみた。
『small…small…』
「え?」
小さな歌が聞こえたかと思うと、だんだん猫が大きく…
「ぇええぇっ!?」
「な!俺の言ったとおりだろ?」
いや!そんな!
「これで兎を助けられるな、よかったよかったじゃねぇか。」
「そうだけど!」
「なにが不満なんだよ?」
「…不満っていうか…不安なんだけど」
なんだそんなことか…猫が言って、床の小さな扉を開けた。
「いってこい!」
「え?
…きゃぁぁあ!!」
首元を掴まれたと思ったら、扉の中に放り込まれた。
どういう神経してるの!?
「待っててやるからしっかり兎連れて来いよー」
そんな声が小さく聞こえた。