「アリス」
「はい?」
突然誰かに話しかけられ、私は後ろを向く。
「…?」
誰も居ない。
「アリスー何してんだ?置いてくぞー」
「あ、うん…」
私は首をかしげ、空耳かな…ってことで再び歩く。
「なんか…違和感」
「あ?」
「私、なんか連れてきてる気がする…」
「なんじゃそりゃ」
言った後、ん?と言って猫が私を見る。
「……」
「……」
「……」
「……な、何よ」
鼻をひくひくさせ、猫は言う。
「…ビル?」
「…トカゲの?」
すると、私の背から、緑色のトカゲが一匹這ってきた。
「なぁにしてんだ」
「いやぁ…つい」
しゅる、と舌を出すビルは、全長10cm位。
「お邪魔はいたしませんよ」
…いや、そういうことじゃなくて…
「うふ、まぁいいじゃないですか。どうせお城まで行くのでしょう?
だったらお供させて下さいよ」
しゅるしゅる、舌をまた出し入れして、ビルは言った。
ビルもお城にご用があるのかな。
「しゃーねぇな。ただし乗るなら俺の肩だ。」
「はいはい…」
ん、と寄せられた猫の肩に渋々乗るトカゲ。
「先を急ぐぞ」
「うん」
城まで、あと少し。

「…おっきい」
「ま…城だからな」
直角になるまで首を反らしても視界に収まらないほど大きなお城。
「…入ろう」
「おう…」
さすがのチェシャ猫も、少し怖じ気付いてるみたい。
私は、自分が二人縦に並んでも余裕で通れる位大きな城門をノックする。
すると、どこからともなく声がして、ギィィ…と古びた音をたてながら、城門が開く。
『お待ちしておりました…アリス』
それは美しい女性の声だった。