白兎が私をかばいトランプ兵に捕まった。
…猫が見つかっても、兎が居なくちゃ『アリス』にならない。
…そういうわけで、私とチェシャ猫は白兎を救出するため、ハートの女王が居るお城へ向かった。
これ以上三月うさぎを危険な目に合わせることはできないから、とりあえずお留守番。

私の前を歩く猫が、急に話しだす。
「なぁ、アリス」
「…なに?」
「アリスは、どうして俺らの血が薄れたか知ってるか?」
「…知らないけど」
言うと、猫はそーか、と言ってまた黙った。
いつの間にか、空には三日月。
薄暗い森は、私を不安にさせる。
「~♪」
すると、猫が突然歌い始めた。
「あーぁー♪」
「…なんの歌?」
「あー♪…ん?即興で作った歌。」
題名は俺。なんて馬鹿みたいなことを言って、再び歌いだす。
「…」
デタラメな音程だけど、なんだか気分が晴れた。
そしたら急に笑いが込み上げてきて
「あはは」
「あ?なに笑ってんだよ」
「ふ…あはははっ」
「…変なヤツ」
私は笑った。
よく解らないけど、凄く気分がいい。
…猫のお陰かな。
「ありがと」
小さく言うと、猫は怪訝そうな顔をした。

「もうちょいで着くぞ、アリス」
「本当?」
あそこ、と猫が指差す方を見ると、大きな城がだいぶ近くに見えた。
「行くぞ」
「はーい」
私はまた、猫の後ろについていく。