同じ体育館でてきぱきと指示を飛ばしているのは藤堂先輩。

菜穂が言うには団長らしい。

大変そう。

「なぁーに?あたしの彼氏に見とれた?あんたには月見里がいるでしょーに。ほらほらぁー」

うりうりとやけに絡んでくる菜穂。

指差す先には月見里君。

「別に。そういう関係じゃないよ」

そう言ったものの、ちょっと月見里君の運動神経には興味があったり。

確かに目を引き付けられるカッコ良さだけど。

細い身体をコート中、縦横無尽に動かしてボールを奪う。

そのまま軽やかに床を蹴ってシュート。

入った。

「うん、文は強いからな。二年の俺でも負けそうだ」

すぐそばに来ていた藤堂先輩が言う。

「そうなんですか?月見里君、インドア派って言ってましたけど。先輩、バスケ部ですよね?」

「いやー、あいつには才能があるから。中学まではあいつもバスケしてたんだけどな。怪我で止めたんだ」

才能。

確かに月見里君の動きは計算を超える。

「まあ、負けるつもりは更々ないけどな。俺たち理系が勝つ」

「ふふ。それでこそあたしの彼氏よね。あたしはバスケだから見に行けないけど応援してるからね、蓮」

仲睦まじいな、本当。

これ以上邪魔してもなんなので私はその場をそっと離れた。