そして、とうとう3月が来た。
修了式が済んだ後で
天城先生の退職の挨拶もあった。
一気に張り詰めたような
空気が漂う体育館の中で
一部の生徒からの啜り泣く声がした。
泣くほど想われていた。
怖いけど、カッコいいから
皆の憧れの的だった先生。
本当に辞めちゃうんだね。
隣県にあるE大付属高校に行くんだね。
4月からA学院にいなくなるんだね。
この日がやってきたんだね…。と
私を何だか…切なくさせた。
4月から3年生になる私は
もう1年あるけど
当然、担任は変わる。
だからもう、天城先生と
A学院で顔を合わせる事はない。
もう、先生の数学の時間もない。
そして…何よりも不安なのは
まだ私は先生から
連絡先も合鍵も渡されていない事と
正式に『付き合おう。』との
言葉もまだない事。
待ってろと言われて
私は待ったから
ちゃんと聞けないと不安で仕方ない。
なかった事なんて嫌だよ…。
先生…先生…。
本当に言ってくれるの?
合鍵をくれるの?
連絡先教えてくれるの?
来月から本当に
先生の彼女になれるの?
会いに行ってもいいの?
寂しさと不安の中
先生の教室での最後の挨拶を聞いて
先生のA学院でのスーツ姿を
目に焼きつけた。
先生にお別れの握手を求める生徒が
後を絶たない状況の中
私の事情を知らないりっちゃんは
「…ほら、みっちゃん早く!!
天城先生最後だから
私達も握手して貰おうよ!!」
私を引っ張って
握手の列に一緒に並んだ。
