甘いキスと蜜の味【本編完結】

煙草を再びギュッと揉み消した

天城先生は立ち上がると

私の横をすり抜けて

準備室の鍵を閉めると

窓際に移動してカーテンも閉めた。

「………?」

私はうっすら涙を浮かべながらも

天城先生が何をしているのか

わからなかった。

すると

天城先生が私を見下ろすように

「…花村、我慢するな。
泣きたいだけ泣いたらいい。
誰も入って来れないから
ここで思う存分泣いたらいい。

そして、お前が今日持ってきた
クッキーを俺にくれ。
鞄の肥やしでは勿体ないだろ?
…今度は俺が
美味いハチミツ紅茶入れてやるから
もう一杯付き合え。
…一緒に食べようぜ。」

なっ?

と言って、立ったまま

いつもとは別人くらいに

優しく微笑みかけてくれて

私の頭をそっと撫でてくれる。

冷房がきいてる部屋だけど

撫でられている手は

何だか優しくて大きくて温かい。

抑えきれなくなった瞳から

涙がポロリ…ポロリと

流れ落ちていった。


先輩達に裏切られた現実も

どうしていいかわからなくて

今はとにかく傷ついたこの気持ちを

何とかしたい。

辛い…切ない…苦しい。

仲直りしたくて

歩み寄ろうと思って昨日

心を込めて焼いたハニークッキー。

だけど、渡せなかった私の気持ち。

「…うっ、…うっ。」

私は天城先生の前で泣いた。

先生は何も言わずに泣き止むまで

時々頭を何度も撫でてくれた。