ノエルは縋るような視線をレンヌに送るが。


「えぇ、今年は街のイルミネーションを破壊するとツイッターで息巻いていましたね…お陰でみんな、ノリノリですよ」


 やっぱり、レンヌも当然知っている。

 大笑いするメンバーたち。

 ノエルは再び、コホンと咳払いをして。


「知っているなら話は早い。予定時刻まであと僅かだ、各自気を引き締めてヤツらの陰謀を阻止するように。タイムリミットは、深夜0時だ」


 一同は、壁に掛けられているクリスマスリースの形をした時計に目を向けた。

 同時に、ベルの音で「赤鼻のトナカイ」が流れる。

 12月24日、クリスマスイブ。

 午後7時丁度の合図だ。

 すっと、皆の目つきが変わった。


「ヤツら去年はマジで駅前の巨大クリスマスツリー、倒しやがったからな」


 ユルユルのネクタイを更に緩めながら、アダムが言う。


「クリスマスのイルミネーションって、子供達だけじゃなく大人にとっても大事なイベントよね…クリスマスイブにあの幻想的な場所で告白されたら、誰だってイチコロですもの」


 クロシェットはそう言って、静かにシャンパンを飲み干し。


「去年は私、倒れそうになる巨大クリスマスツリーを支え切れませんでしたから…それだけが心残りでした…今年こそは、そんな気持ちのままお正月を迎えたくないですからねぇ…」


 腕組みをして、感慨深げに呟くレンヌ。

 アンジュは、すっと立ち上がる。


「どっちにしろ、あいつらが夢のクリスマスイブに好き勝手すんのが気に食わないのよ。今年こそは、ギャフンと言わせてやるんだからね!!」

「私は君たちを心から信頼している。危険な任務だが、頑張ってくれたまえ」


 気合いが入ったメンバー全員に激励の言葉を送るノエル。

 同時に、全員が立ち上がり、秘密の部屋を出て行った。

 裏の世界で暗躍する組織は数々あれど、その中で最も恐れられている「ホワイト」と「ブラック」の確執は今や有名であり、都市伝説と化している。

 その都市伝説の死闘が今夜、クリスマスムード一色のこの街で繰り広げられようとは、誰もが知る由もなかった――。