逆走チルドレン

「エコ、また明日ー」
「またねー」
入学してから数週間。友達もできて、高校生活にも慣れてきた。
……部活、何しようかな。一年は強制だからなぁ。なんて考えながら、トコトコ歩く。すると、
「うあー!」
目の前に人が倒れ込んだ。ずっしゃあああっと、派手な音を立ててすっ転ぶ。
「だ、大丈夫ですか?」
声をかけると、その人はむくっと起き上がった。
「うぅ……いてぇー」
体中が砂だらけで、顔も汚れている。汗で砂がくっついているらしい。
「あの、これ、どうぞ。」
鞄にタオルが入っていたことを思い出し、とりだして差し出す。
ハンカチでも良かったけど、結構汚れているから。
「ありがとう。」
その人は少し驚いた顔をしてから、タオルを受け取ってくれた。
「あ……。」
その顔を見て、私は声を上げる。

部活紹介で見た、あの王子様だったからだ。

「ん?どうかした?」
「あ、えと。」
まじまじと顔を見ていたせいだろう、彼は不思議そうに私をみる。
「演劇部の人ですよね?」
思い切って聞いてみると、彼はにっこり笑った。
「うん。そうだよ。演劇部に興味あるの?」
「え、いや、そういうつもりじゃ……」
「違うの?」
「………」
黙ってしまった私を、彼は嬉しそうに眺めている。
「なんていうか、あなたの演技が心に響いているというか……あ、すみません……」
「謝ることないよ、そっか。心に響いてくれたのか。」
先程より嬉しそうに笑う。
「は、はい。」
「君みたいな子に入部して欲しいな。一年生結構来たけど、よく分かんないけど皆俺ばっかりに話しかけてきて、部活の見学しないんだ。」
不服そうに言う。
みんな、あなた目当てなんですよ。
「俺、ヒロ。ヒロ先輩って呼んでくれ。君は?」
「都木絵子です。」
「エコか。よろしく。」
「宜しくお願いします。」
「演劇部に入ってくれるよね?」
「え、無理ですよ……先輩みたいに華やかじゃないですし。」
「大丈夫だよ。でも、んんー無理矢理入れるのもなー。あ、そうだ。明日見学に来てよ。タオル、洗濯して返すからさ。」
「……わかりました。明日行きます。」
「ん、じゃあね。タオルありがとう。」
そういって、ヒロ先輩は走り去っていった。