『いーち、にー、さーん。』
夏休み。
私、都木絵子(たかぎえこ)は、演劇部に所属しています。
腹筋を部員たちと何十回も繰り返す。体力って必要だからね。


自分で言うのもなんだけど、私は大人しくて、演劇だなんでキラキラしたところに縁がないような人生を送っていた。
でも、高校に入って、少しでも変わりたくて。
誘われて演劇部に入った。

「エコ、大丈夫か?顔赤いぞ。」
「あ、ヒロ先輩。」
柔らかそうな髪。優しそうな雰囲気を纏って、私を演劇部に誘った張本人。
演技のホープでとても人気がある。
「ほら、水。」
「ありがとうございます!」
手渡されたミネラルウォーターを受け取り、飲もうとすると、蓋が緩んでることに気づいた。
「あ、ごめん。それしかなくて」
「い、いえ!大丈夫です!」
そ、そっか。ヒロ先輩の飲みかけか……。私なんかに渡しちゃっていいのかな?
先輩優しいからな……。気にしないで飲もう。

なんか、顔が熱い。