逆走チルドレン

「あ。」
教室を出ていこうとする大賀の姿を見る。
「今から?」
「いや、1時間後だ。」
掃除当番があるらしいと、呟く。
「ふぅ、緊張するな。」
いつもお兄さんみたいな大賀が弱気になっていると新鮮だ。笑みが溢れる。
「大丈夫だよ。」
「笑うなよ。」
ごめんごめんと、鞄を漁りお菓子を出す。
「ポッキーあげる」
「ん」
一本差し出すと嬉しそうに食べ始める。昔から好きだよね。
穏やかな時間が流れる。この居心地のいい関係も、大賀が上手くいったら無くなるんだよな。
「なあ、愛花はなんで協力してくれたんだ?」
「え?大賀がお願いしてきたんじゃん。それにほら、幼馴染みだし。」
自然に自然に。笑って笑って。
「そーだよな。」
「上手くいくといいね。」
「…………」
「大賀?」
じっと彼が見ているものは、
「裾、掴んでる。」
嘘ついているんだろ?と言いたげな声音。
私の右手は見事にセーラー服の裾を握っていた。
「どういうことだよ、愛花」
どうしよう。頭の中が真っ白になって対応できない。どうしようどうしようどうしよう。




「最近、一組の井村くんと仲いいよね!付き合ってるの?」
「付き合ってないよー……でも、好きかな。」
「告らないのって……あ。」


我がクラスの前を通るとき繰り広げられた会話。
「い、井村くん」
佐々木さんだった。どうやら掃除当番のゴミ捨て係だったらしい。ゴミ箱を友人らしい子と運んでいる。

頑張れ、私。

「うそーっ!良かったじゃん大賀!佐々木さんと両想いだよ!!」

明るく笑いながら、バンっと大賀の背中を叩く。

「んーもー、私は用無しかな!じゃあね!」
「あ、おい!愛花!」

振り返り、「良かったね」と呟く。
あ、だめだ。笑えてない。逃げるようにその場を走り去る。

頑張ったね、私。