「お熱いところ申し訳ないけれど、一つ言っておくよ」


私達の注目を促すようにシナ様が咳ばらいをした。


「白龍、君は人間になったら今までの記憶を全て失う。龍神であった過去も、愛しい者との思い出も。それでも良いんだね?」


「ああ。記憶があろうとなかろうと、俺の魂は沙織を求める。問題ない」


「凄い自信だねぇ。ま、良いか」


苦笑しつつシナ様は私達の額に手を置いた。


「目を閉じなさい。今から君達は自我を失い、ただの真っさらな魂になる」


自我を失う…。

今から本当に、自分が自分でなくなっちゃうんだ…。


「案ずることはないよ。ただ眠るように身を任せてくれれば良い」


何も怖くない。

わかっているけど緊張と不安で強張ってしまう。


そんな私の手を伊吹様が優しく握ってくれた。


大丈夫。

隣には伊吹様がいる。

怖くない。



ゆっくり目を閉じると、あたたかな熱が全身に伝わってきた。


ぽかぽかして、気持ちいい…。



なんだか…あくびが出そうになる…。




ねむって………しまいそう……。





からだ……ふわふわ…する……






ふわ…ふわ……







ふわ、ふ……わ…――