「千早様!伊吹様!」
声を上げた瞬間、上へ引っ張られる力が強まった。
勢いよく千早様の腕の中から飛び出すも、空へ舞い上がってしまう前に千早様と伊吹様にそれぞれ片腕を掴まれる。
「千早様、伊吹様、ごめんなさい…!私、どちらかだけなんて選べません!」
二人の目が同時に見開いた。
「二人とも同じくらい好きなんです。ずっと、一緒にいたかっ……うっ!」
さらに増した「お迎え」の力。
掴まれてる腕に痛みが走る。
魂なのに、痛い。
千切れそう…!
「千早様!兄上!手を放してあげて下さい!このままでは…!」
朧様の忠告に怯んだのか、僅かに二人の力が弱まった。
その瞬間――。
「大好き……さようなら…」
最後の言葉が二人に届いたかはわからない。
私の身体は弾かれたように空へ飛んだ。



