その掛け軸にはデカデカと「倭文」の二文字。
なんて読むんだろう…?
わ、ぶん?
うーん…。正しい読み方がわからないうえ意味もサッパリだ。
私がジーッと掛け軸を凝視しているのに気づいて、シトリ様がクスリと笑った。
「読めるか?」
「いえ…。読めないし意味も知りません」
「それはな、シトリと読むのだ」
「え!?」
これでシトリって読むの!?
知ってないと絶対読めないよ!
「ということは……シトリ様の名前…?」
「然様。私の名はああ書く」
そうなんだ…。
勉強になりました。
シトリ様の漢字は「倭文」。
覚えとこう。
「そんなことより、沙織。少しの間と言っていたが、具体的にどのくらい奴らから逃げ回るつもりだ?」
奴らって、千早様と伊吹様のことだよね。
どうしよう…。
まだ何も考えてないよ。



