ダメだ…。

私はやっぱり、伊吹様への恋心を…裏切れない。


私は千早様の身体をそっと押した。


「沙織?」


「私、頭の中…ぐちゃぐちゃなんです」


千早様から離れて立ち上がる。


「ちょっと……考えさせて下さい」


そう。

考える時間が欲しい。

一人でゆっくり自分と向き合いたい。

千早様も伊吹様もいないどこかで――。


気づいたら、私はシトリ様の前に来ていた。


「シトリ様、私を…千早様も伊吹様も来れない場所に連れてって下さい」


「!?」


私の言葉に千早様達だけじゃなく、シトリ様も驚いた表情を見せた。


「ほう?私に縋るか」


「他に、いませんから」


「確かにな。ふむ…どうしたものか」


シトリ様は少しの間、眉間にシワを寄せて考えていたけど、やきもきして成り行きを見守る千早様を横目にニヤリと笑った。