「………それは……伊吹と一緒になる…ということか…?」
絞り出すような千早様の声に、私は顔を上げた。
「違います」
私の答えを聞いて千早様同様、伊吹様もピクリと反応したのがわかった。
「私は、千早様も伊吹様も…選べません」
今の気持ちじゃ、どちらも選べない。
どちらかだけを愛するなんて無理だ。
「沙織!私は天命を全うした君を失っても、自暴自棄にならないと決めたんだ!後追い自殺なんかしない!だから今この時を、私と共に生きて欲しい…!」
千早様が座り込んでいる私を抱きしめてくれた。
「お願いだよ……離れるようなことを、言わないでおくれ」
千早様にギュッてされるの、やっぱり好きだな。
落ち着くし、安心する。
貴方の温もり、大好きです。
けど…。
秘めた思いを訴えるような伊吹様の瞳と視線がぶつかった。
――今生を、俺と共に過ごせ
甦る、さっきの言葉。



