ちょっと興味があったから、私は差し出された徳利を受け取った。
「いただきます…」
言ってから一口含む。
甘いけどサッパリした桃の味が口内に広がった。
「おいしいですね。爽やかな味」
「だろう?酒よりもこちらの方がいい」
徳利を返すと、伊吹様はまたそれに口を付けた。
私はココアを。
しばらく二人で沈黙しつつ飲んでいると…。
「沙織、黄龍と何があった?」
急に伊吹様が口を開いた。
「何がって……何もないですけど」
「何もなくて、奴がお前を一人にさせるわけがない」
伊吹様は優しく私の頬を撫でた。
「伊吹様…?」
「笑え。憂い顔はお前に似合わない」
憂い顔…?
私、そんなに曇った表情してるのかな…?
千早様と、会えないから…?



