そういえば私が来てから黄金の屋形では、まだシシャモが食卓に上がったことないなぁ。
若月様に頼めば焼いてくれるかな?
若月様は料理上手だから何をリクエストしてもおいしく作ってくれそう。
今日もエプロン着てたよね…。
今晩は何の料理だったんだろう。
…………今頃、屋形のみんなはどうしてるかな?
また私がいなくなって心配かけちゃってるかも。
特におばあちゃんとか…。
「はぁ…」
無意識に小さな溜息が零れた。
「どうした、沙織」
背後から伊吹様が小声で尋ねてくる。
「あ…何でも、ないです」
その場を取り繕うため、私は無理に微笑んでみせた。
向こうに帰りたい、なんて……ここで言えないよ…。
千早様…早く私を見つけて下さい。



