「私の部下が足止めしているからな。早々には来んだろう。それに、恐らくあいつはまず禿山へ向かうはずだ。私の棲家があるからな」
開け放したままだった部屋の出入り口へ歩きながら、シトリ様は思い出したように言った。
「そうだ。この部屋は貴様が使え。なかなか風情のある部屋よ」
そして、トンと襖を閉めてシトリ様が出て行った。
部屋には私と伊吹様の二人きり。
………二人きり。
未だ私の背中に引っ付いている伊吹様をチラッと確認する。
「あの~、伊吹様」
「何だ」
「重いです」
「……そうか」
「どいてくれませんか…?」
「嫌だ」
「重いんです」
「嫌だ」
ど…どうしよう…。
伊吹様が駄々っ子になってる。



