だから千早様にも覚悟を決めろって言いたかったんだ。
喪失の痛みに堪える覚悟。
それを乗り越える覚悟。
朱美ちゃんや謙一郎さんを暴れ龍にしないためにも、千早様の覚悟は重要だよね。
「ふむ……話はここまでか。意外と早かったな」
「え?」
「来おったぞ」
何が来たのかと考えていたら、ドカドカと廊下を走る音が聞こえてきた。
「沙織!!」
スパンと音がするんじゃないかというくらい凄まじい勢いで襖が開かれた。
息せき切って入ってきたのは伊吹様。
「い、伊吹様…?」
「沙織……なぜここに」
焦ったような表情の伊吹様を見て、シトリ様がクツクツと喉で笑った。
「私が連れてきたのだ」
「お前が…?」
伊吹様が訝しげにシトリ様を見た時だった。



