「この部屋と、その隣をどうぞ。お気に召さなかったら他を使っても大丈夫ですよ。私の部屋以外は全部空き部屋だから」
「え?じゃあ、さよ子さん以外は誰も住んでないんですか?」
「今のところはね。静寂様はあまり人間と接しようとなさらないから」
雪の屋形にはさよ子さん一人だなんて、寂しくないのかな?
「あの…沙織さんでしたよね?先程のお話から察するに、あなたは伊吹様に助けられたとか」
「あっ、はい。そう、みたいです」
実のところ、いつ助けられたとか全く記憶にないんだけどね。
今度、伊吹様に会ったら詳しく聞いてみようかな。
「そうなんですか。若い子が来て下さって嬉しいです。この屋形も人数が増えて明るくなりますね」
「え…」
「これからよろしくお願いしますね」
「あ…はい」



